「熔ける 大王製紙元会長 井川意高の懺悔録」を読んで

大王製紙前会長である井川意高氏が、カジノにはまり込み子会社から100億以上の資金を借り入れ、会社法違反で逮捕されるまでの顛末を描いた自伝。軽快かつ論理的な文章であり、短時間であっという間に読み終わった。以下に感想を記しておく。

 

経営者として十分な能力を持ちながら、ギャンブル依存によってその社会的地位から転落していく様子が、非常に客観的に(どこか他人事のように)描かれている。

 

⇒人は、過去の自分を客観視する理性を持っていたとしても、快楽に依存するという本能には抗えない。そして、これは自分にも起こりうる、ということを肝に銘じたいと思う一冊であった。

インタビューここから「吉野彰」を見て

リチウムイオン電池開発でノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんのインタビュー番組。

 

★★★

仕事以外の経験、周りの人とは違う経験をたくさん積んで、

仕事で壁にぶつかっても簡単に諦めず、

いつか壁を越えられると信じて常に考えよう。

★★★

 

 

・研究開発で重要なのは、5年後・10年後にその技術が世の中に必要とされているかどうか、を見極めること。大学時代の考古学研究会での経験が生きている。

 →目指すものと真逆の方向性の経験や周囲の人とは違う経験が、研究の先見性や独自性に繋がったのだと思う。

 

・企業での研究職を選んだのは、ものづくりで世界を変えたい、という思いから。

・基礎研究のほとんどはダメもと。気楽である一方、とても孤独なもの。いつか新しいことが見つかるという信念で続け、入社10年目でポリアセチレンという電気を通すプラスチックに出会う。

・1980年代、ヘッドホンステレオやビデオカメラ、携帯などの多くの電子機器がポータブル化したことで、小型で繰り返し使える電池が求められた。

・当時、電池研究の主流は安全性に課題のあるリチウム。ポリアセチレンなら安全に使えると考え電池への適用研究を始める。

 リチウムイオン電池が生まれたのは、時代のニーズと研究対象がたまたま合致したというのもあるが、なかなか結果に結びつかない基礎研究でも卑屈にならず、ものづくりで世界を変えたい、という信念をもって続けた結果なのだろう。

 

・負極であるポリアセチレンの対となる正極の材料がなかなか見つからず研究は行き詰った。

・ちょっと頭を空っぽにしようと取り掛かった大掃除でコバルト酸リチウムに関する論文をふと手に取った時にピンときて、電池の試作に成功。

・研究に行き詰った時の突破方法は二通りある。一つはとことん考えて火事場の馬鹿力的に見つかるとき、もう一つは頭が空っぽになった時間が出来たとき、だという。

 →ふとした瞬間、偶然に壁を突破したように聞こえるが、たぶん日常の中でもいつも研究のことを考えていたからこそ、乗り越えられた壁なのだと思う。